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自筆証書遺言書保管制度スタート!


阪口充弘

2020年7月10日から遺言書を法務局で保管する制度が始まりました。これまで自筆証書遺言のデメリットであった、改ざんや隠ぺい、紛失というトラブルが避けられます。

遺産分割でトラブル、”相続””争族” にならないように、遺言書は有効です。なかでも自分で手書きする自筆証書遺言は、いつでも書けて、費用もかからないので、多く作成されています。自分で書いて自分で保管するので簡単な反面、トラブルも起きていました。タンスや仏壇、金庫などに保管するのが一般的ですが、どこにおいたか忘れてしまう、なにかの拍子で別の場所に移動されてしまう。また近年、自然災害が増えているので、火災や水害で失われてしまうこともあるかもしれません。さらには、不利な条件になる相続人がこっそり隠したり、捨てたりすることもあります。そもそも、遺言書の存在を遺言者以外が知らなければ、相続人が遺言書を見つけられないかもしれません。遺言書を探すということ自体に思い至らない場合さえあります。
急死した資産家が「全資産を市に寄付する」とした遺言書について、その無効確認を求めた訴訟でも、保管や発見された経緯が不自然であり、遺言者以外が作成したのではという点が争われています。

法務局で自筆証書遺言を保管することには、次のメリットがあります。

■紛失しない

法務局で遺言書が保管されるので、失ったり、保管場所を忘れたりといった心配がありません。

■改ざん、隠ぺい、破棄されない

存命中は法務局に保管されている遺言書を閲覧したり、撤回、変更できるのは、遺言書を預けた本人のみです。また、相続開始後は相続人は遺言書の閲覧が可能ですが、相続人の1人に遺言書を閲覧させた場合、他の相続人に遺言書が保管されたいることを通知されます。遺言書は原本のほかに画像データ化されるので改ざんの心配もありません。

■検認が不要

遺言書を発見したときは、気になるでしょうが勝手に開封してはいけません。開封してしまうと罰則があります。家庭裁判所に申し立てて形式のチェックを受ける必要があります。これを検認と呼び、およそ1ヶ月くらいかかります。この間、遺産分割協議を進められません。法務局で保管した場合は、この検認が不要で、すぐに遺産分割に着手できます。

自筆証書遺言書保管制度により、保管に関する問題は改善されますが、遺言書を自分で作成するため、内容の正しさや遺言能力について、後日紛争となる可能性はあります。一般的に、相続開始後の紛争防止に一番有効なのは公正証書遺言書だといわれています。
公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言のことです。2人以上の証人といっしょに公証役場に行って、遺言の内容を口頭で伝えます。プロである公証人がそれを筆記し、ときには遺言者の真意を確保するための助言をするなどして、最善と思われる遺言書を作成します。作成した遺言書を遺言者と証人が確認をし、公証人によって保管されます。手間や手数料はかかりますが、自筆証書遺言に比べ、確実性の高い遺言だといえます。

遺言を作成される方は増えてはいますが、まだまだ少ない状況です。遺産の額にかかわらず、相続に関するトラブルは増加しています。遺言書の保管制度が開始されたこの機会に、みなさんも、遺言書の作成を考えてみてはいかがでしょうか?

自筆証書遺言保管制度について詳しくは「法務省」ホームページへ