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経済的自立で目指せ新時代!


阪口充弘

「FIRE」という言葉が、若者を中心に流行しています。”Financial Independence, Retire Early”の頭文字をとったもので、若いうちから資産形成をして、経済的に自立し、早期リタイアの実現を目指すことだそうです。この「FIRE」は一種のムーブメントとなっているようですが、すこし気になったので書いてみます。

Financial Independence 経済的自立

「FIRE」の前半「Financial Independence」若いうちから資産形成をして、経済的自立を目指すという部分は、大賛成です。昨年から新型コロナ禍で、将来の収入に不安を覚え、さらに在宅勤務などにより、自身のお金に対し考える時間ができたことから、資産運用を真剣に考え始めたという方が増えています。実際、ネット系の証券会社のなかには新規口座開設数が過去最高を記録したところもあります。ファイナンシャルプランナーとして運用の大切さを訴えてきましたので、運用に対して関心が高まるのは嬉しく感じます。

Retire Early 早期退職

気になるのは、「FIRE」の後半「Retire Early」の部分です。前半の「経済的自立」よりもむしろ後半の「早期退職」に重きが置かれているように思えます。早期退職自体は何も問題ではないのですが、気になる点が3点あります。
まず1点目は「今の仕事がイヤだから、早く辞めたい」「会社に縛られて、自由にできない」と、「会社」を否定する考え方があるのではないでしょうか?自分に合わない仕事をしながらでも、無理に会社にしがみつけとは言いませんが、「会社」の良さを改めて考えてみてください。社会保険、厚生年金、企業年金、福利厚生…会社員はさまざまな面で守られています。病気をして仕事を休んでしまっても収入は保障されています。老後の年金も国民年金のみのフリーランスよりは、手厚く準備されています。また、株式会社の起源と言われているオランダ東インド会社を思い出していただければわかるように、多くの資本家から資金を集めることで、「会社」はひとりではできない冒険や発明をし、社会を変え貢献をしてきました。そもそも、FIREの「FI」に必要な運用は株式会社が無いと成り立ちません。
2点目は、FIREを目指すうえでの指標として生活費が資産の4%以内ならばというものがあり、比較的少ない資産でも生活費を節約をすればリタイアできるという考え方です。自動車を所有しない人が増えてきたり、ミニマリストが注目されるように、若い人を中心に増えている、あまり物欲を持たない生き方が「FIRE」というムーブメントに繋がっているともいえます。「家が欲しい、自動車が欲しい」「より良いくらしをしたい」という気持ちが、経済を成長させてきました。節約すれば生活できるということで満足していると、社会を発展させる意欲が損なわれるような気がします。
3点目は、早期退職を目標にすると、資産運用が無理しがちになるということです。早期に退職しようとすると運用できる期間が短期になります。そのうえ、いくら節約するにしてもかなりの金額が必要となるため、高い利率を求めるようになります。若い方からのご相談のなかには、「インデックスよりももっと儲かるものを知りたい」や「不動産に投資した方が収益が上がりますか」など、より高い利益を求めるかたも増えています。(もちろんFPなのでリスクをお伝えして、できるだけ無理のない運用をお勧めしていますよ)

ここで提案です。
FIRE ”Financial Independence, Retire Early”「経済的自立と早期退職」
ではなく、
FINEFinancial Independence, New Era”「経済的自立と新時代」
を目指しませんか?

New Era 新時代

「RE」早期退職を目標とするのではなく、まずは「FI」経済的自立を目指して資産形成、資産運用をしませんか?
経済的自立に近づくことで、まずは将来に対する不安を減らせます。新型コロナで不安を感じられる方が多くなっていますが、AIの発達等の技術革新、人口構造の変化や世界情勢、価値観、社会情勢の変化…どんな仕事でもいつまであるか分からないといえます。なくならないまでも収入が減ってしまうかもしれません。自然災害も増えていますし、地震への心配もあるでしょう。老後資金については、不安に感じていない人は少ないでしょう。そんなときの備えとして資産を作っておきましょう。(もちろんそれまでは保険も有効な手段です)
さらに、資産ができると選択肢が拡がります。「人生100年時代」「働き方改革」長い人生のなかで、新たなことに挑戦していくときに、生活費の心配がないことは大きなアドバンテージとなります。副業を始める、リタイア後に昔から憧れていた仕事をするための準備をする、趣味の時間を増やす、社会貢献をする。今まで会社員として諦めていたことができるかもしてません。もちろん、早期退職も選択肢のひとつとなって良いでしょう。
「貯蓄から投資へ」と言われてから20年近く経ち、いまでは「貯蓄から資産形成へ」と言い換えられていますが、新型コロナがきっかけとなり、ようやく運用が一般的になりつつあります。一過性のブームで終わらせることなく、常識となるようにしたいものです。経済的自立により、お金のためだけに働くのではなく、本当にしたい仕事、なりたい自分、家族、友人、社会に対する自分の役割…それぞれの夢をかなえられる新時代(New Era)を目指しましょう。